ウエストランドが嫌いなのでネタの分析をします【2022.12.20】
私はウエストランドがどうしても好きになれずにいた。別に「人を傷つけない笑い信者」というわけではないし、お笑いなんか多少なりとも人を傷つけるくらいの暴力性が無いと成立しないとも思っている。でも、ウエストランドほどこっぴどく人を傷つけなくてもいいじゃないか。そんな暴言で私が笑うと思うなよ。
と、思っていたわけだ。なのに。
お察しの通りです。2022M-1グランプリのウエストランドのネタで、転がり回って笑っちゃった。
おかしい。私はウエストランドのネタで笑うような人間では無い!!!!!!!
というのは冗談だけど、とにかく、今まで「ウエストランドはあんまり好きじゃないんだよね〜……」とか言ってきた自分としては、自分をどうにかして納得させないと気持ち悪いわけだ。
ということなので、「ウエストランド嫌いな私が、どうして今回のM-1グランプリネタはひいひい泣きながら笑っちゃったのか」を考えます。
まず前提として、私は「正論」が大嫌いだ。もっとちゃんと言うと、「正論を言う人」が大嫌いだ。
「正論を言う人」は、なんでか知らんけどみんなドヤ顔をしている。「自分は正しいことを言っておりますが?」という自信が、溢れるどころか下品にぼたぼたこぼれまくっている。それどころか、「こんなことにもあなたは気付かないんですか? いや、そんなはずはない。頭のいいあなたならきっとお気付きかもしれませんが?」みたいなすっとぼけた見下しもこぼれまくっている。そういうところがすごく嫌いだ。
どうしてそんな顔ができるのか。お前は正しいことを言っているだけの器に過ぎないのに。
「正しいこと」というのはこの世界が決めてるから正しいんだろうが。お前が「正しいこと」を言えるのは、世界がそれを「正しい」と決めたからだ。世界が決めた理論に感謝しろ。正しいことを言っているお前が偉いのではなく、それを正しいと定めた世界が偉いんだ。ドヤ顔をするな!
話を元に戻す。
私は、「悪口」も正論の一種だと思っている。というのも、「悪口」というのは多少の正しいことが入っていないと成立しないからだ。本人に全く関係の無いことを言っても、それを言っている人がただの変な人になるだけだ。ほんの少しでもいいから、正しいことが入っていると、それはれっきとした「悪口」になる。「悪口」が盛り上がるのは、そこに「確かに~!」という共感が生まれるからだ。すなわち、正しくなければ悪口にはならない。
今回、ウエストランドのネタが色んな場所で「悪口漫才」とジャンル分けされているのを見かけた。確かに、あれは「悪口」の一種だ。明らかに嫌な意図で、正しいことを言っているからだ。
でも、ただ単に「悪口漫才」というジャンルにしてしまってもいいんだろうか。私はあの漫才を、「悪口漫才」だとは思わなかった。
「あるある漫才」だと思ったのだ。
なぜあの漫才が「悪口漫才」ではなく「あるある漫才」だと思えたのか。
大きな一つの理由は、構成だと思う。今回のネタは、「あるなしクイズ」に井口さんが答えるという構成で進んでいた。
「あるなしクイズ」。ただのクイズであって、クイズは基本楽しむものでしかない。なのに、なぜか井口さんは初っ端からキレている。もう一問目からキレている。クイズを楽しめばいいのに、なぜかキレている。本来なら存在しないはずのキレポイントを、勝手に見つけて勝手にキレている。「理不尽なこと」にキレているのではない。「理不尽」にキレているわけだ。
あの構成にしたことで、井口さんの理不尽さがめちゃくちゃに際立った。簡単に、端的に、誤解を恐れず一言で言うとすれば、「一瞬で井口さんがやべえ人だと分かった」。
ここで、井口さんの言う「悪口」が、「正論」からワンランク下のものになった。井口さんは確かに正しいことを言っている。だけど、全然ドヤ感が無い。むしろ、叫べば叫ぶだけ滑稽になる。だって、どう考えてもやべえ人なんだもん。ただのあるなしクイズに、急にキレ始める人。しかも、キレてるくせにあるなしクイズをやめさせるわけでもなく、「もう一問出せ」と言い始める。意味が分からない。
ここでもしあるなしクイズそっちのけで、一つのお題、例えば「アイドルにあって俳優には無いもの」だけで4分キレ続けたら、それは明らかに「悪口漫才」でしかない。でも、なぜかある程度キレたら次のお題へ進めさそうとする。つまり、井口さんがやりたいのは「特定の人間への悪口」を言うことではない。「もうなんでもいいから気に入らないことを喚き散らしたい」だけでしかないのだ。
今回炎上したのは多分、「YouTuberだって捕まらない人はいるのに!」とか、「長尺コント大好きなのに!」みたいなところだと思う。そう思った人達としては、多分この漫才が「特定の人間への悪口」だと思ったんだと思う。
でも、この漫才においてそのツッコミはちょっと違うんじゃないか?と思ってしまう。
言うなればこの漫才は、「ショートケーキ食べる時、イチゴって最後に残しちゃうよね」みたいな話なのだ。
なんというか、概念の話。だから、「いや、私はイチゴ最後に食べますけど!?」「友達は間に食べてる、友達を馬鹿にしてんのか!」とはならんやん。「自分は違うけど、なんとなく、言いたいことは分かる」ってことなんよ。
YouTuberも、どんなに有名でも知ってる人以外は知らんやん。言ってる意味伝わるかな。自分の見たことあるYouTuber以外のことって、全然知らんやん。その人たちの名前を聞くときって、ニュースとかのことが多いやん。ニュースでYouTuberの名前聞くタイミングって、警察に捕まったときだったりするやん。そのとき、「うわ~、YouTuberの○○捕まったんか」って思う人もおるとは思う。でも大概の場合、「うわ~、またYouTuber捕まったんか」って思ってしまうとこあるやん。なんか、括っちゃうやん。そういうことよ。
特定の人間を刺す悪口なんじゃなくて、ちょっと刺激的な強い言葉のあるある。まあ確かに佐久間さんの個人名出てたから、そこだけは特定の人間刺してたけども。
今回のネタはあえてあるなしクイズ形式にしたのかな、とかも思ったんよね。だって、一回戦も二回戦も同じ構造にしてたもんな。だから、この構造はウエストランドの見つけた「オカンが言うにはな」なんやろうな、と思った。違ったらごめん。
なんか、ただの「悪口漫才」じゃなかったから、私も笑っちゃったんやろうなってすごい思った。これまでずっと「ウエストランドどうもね……肌に合わんのよね……」って言い続けてきたもんやから、こうやって言い訳しとかないとな。なんか、なんていうか、悔しいから。M-1三連単の候補にすら入れず、「まあね……私はウエストランドはね……」みたいな「お笑い分かってます顔」してた私としては、正直な感想を言うと、悔しいの一言に尽きるんですわ。
とにかく、めちゃくちゃ面白かった。すっごい、腹抱えて笑った。できることなら、このフォーマットでこれからも行ってくれんかな。無理か。何せウエストランドは、こんな風に長々ネタの分析する人間の主張なんかゴミほども興味ないだろうからな。そうやって己の道を貫いて、カルティエの店内でもコントをディスったりしてる人間性は、マジでかなり好きです。
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