『蝶のいた庭』に見る、グロテスクと美しいアートの共存【2022.12.18】
『蝶のいた庭』という小説を読みました。
最高でした。本当にすごかった。軽々しく誰かにおすすめすることは出来ないけど、私は本当に好きだった。
私は「狂った愛情」っていうジャンルが本当に好きなんやけど、この小説はそれの最たるものだったね。狂ってた。狂ってるのに、びっくりするくらい美しくて、びっくりするくらいグロかった。
小説なのに色鮮やかだった。目の前にね、「ガーデン」が見えるんだよ。これ読んだ人にしか分からんと思うけど。これの意味が知りたい人は、ぜひ読んでほしいね。「ガーデン」が見えるんだよ、本当に。私自身も、「ガーデン」の中にいるみたいな気持ちにさせられるんだよ。それがね、もうすっごい美しくて、すっごい怖いの。綺麗なのに、「怖い」が勝つんだよ。不思議な世界観すぎる。
この小説の構造もすごい面白かったな。
大部分が、とある少女・マヤの独白なんだよね。警察署の取調室にいるとある少女が、FBI捜査官の質問に答えている場面がほとんど。それが、すごい過去に行ったり、最近の話になったり、現在になったりして、時間軸がころころ変わる。ややこしいけど、別にぐちゃぐちゃにはなってしまわない。
このマヤがいた場所が、「ガーデン」っていう場所なのよ。で、その「ガーデン」には通称「庭師」って人がいる。この「庭師」が、狂った愛情の持ち主。この「庭師」、自分の気に入った女の子を拉致してきて、「ガーデン」に監禁してるんよね。
で、その「ガーデン」の中で何が行われているのか。それがマヤの独白の中で明らかになっていく。その行われてることの美しさとグロさったらもう、すげえんだから。
美しさとグロさって、ちゃんと共存できるもんなんやね。
私はなんていうか、「過激なアート」のアンチなのよ。グロいもの、血液・臓器・排泄物なんかをアートとして扱うの、本当に嫌い。それはグロでしかなくて、どんな使い方がされるとしても、グロの範囲を超えていくことはできないと思ってる。
この小説には、直接的なグロがあまり出てこない。そこもすごい好感度高い。確かに何度かグロいシーンはある。でも、「グロいシーン」以上に「グロい」と感じる場所がいくつもある。直接的なグロじゃなくて、間接的なグロ。身体的なグロじゃなくて、精神的なグロ。
これがねえ、グロいのに美しかったね。こんなに美しいグロテスクってあるんだ、と思った。これはアートと言ってもいいと思う。小説自体がではなくて、「ガーデン」という場所がアートだった。……誰も分からんやろうな、この話。読んだことある人は分かってくれるはず。
あと、これももう、読んだ人にしか分からないことを言うけど。
私はね、もしも「ガーデン」に入れられてたとしたら、ロレインみたいになると思う。なぜなら私は、狂った愛情が好きだから。だからこそ、ロレインの一挙一動が全部苦しくて仕方なかったな。この本でロレインに感情移入する人いるんかな。悪役というか、嫌な奴として表現されてるから、感情移入するのは難しいんやけど、でも一定数ロレインの気持ちが分かる人もいると思う。ロレインは愚かやけど、でも可哀想だよ。ロレインはロレインで、一生懸命生きてんだもん。
本当にいい小説だった。久しぶりに読んだ小説がこの小説なのはちょっと、アレやけど。でも、多少のグロテスクに耐性がある人はぜひ読んでほしい。これってなんのジャンルになるんやろう。ホラーまでもいかないし、サスペンス要素もちょっとあるし、サイコな部分もあるし、恋愛もちょっとある。後味もスカッとするようなものではない。
とにかく、こういったものがちょっとでも気になる人は読んだ方がいいよ。新しい扉が開くから。「ガーデン」への扉が。
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