図書館で交わす片道切符のメッセージ【2021.4.27】

家を引っ越したら図書館が近くなったもんで、「図書館に通う」っていうことが出来るようになった。高校時代のほとんどを図書室で過ごした陰キャ大歓喜。

「図書室」って凄かったんやなって今になって思う。だって今で言うたら仕事場に自由に本が読める場所があるみたいなことやんか。毎日「通わんとあかん所」に「本が大量にあってどれでも好きに読んでいい」ってめちゃくちゃヤバない? どんどん図書室の司書さんみたいな人と仲良くなって、その人に読みたい本をリクエストしまくって、全部入れてもらってた。めっちゃ楽しかったな、あれ。

昔は授業の合間の休憩とかでも読み進めてたから、平均1週間で1冊くらいは読み切れてたんやけど、今は2週間で1冊が限界。2週間かけて1冊読んで、返すのと同時に1冊借りてくるを繰り返してる。

この間借りた本を読もうと思ったら、一番後ろのページから「貸し出し表」が出てきた。図書館行ったら発行される、借りた本と日時、返さなあかん期日が書かれたちっちゃいレシートみたいなアレ。もちろん私のやつじゃなくて、前回その本を借りた人のやつね。

あれが出てきたとき、なんか無性に興奮した。あ、この本を私の前に借りた人がおんねやなって。耳をすませばの世界。ただ、耳をすませばみたいに貸し出し表に名前が書いてあるわけじゃないから恋愛なんかに発展するはずもないけどさ。

貸し出し表の日付が1年前になってて、小説1冊の他に、ビジネス書っぽい名前がいくつか並んでた。

「耳をすませば」じゃないけど、そりゃそれくらいのロマンはあってもええやん? だからその貸し出し表の持ち主を予想してみたりする。ビジネス書が多いってことは、多分大人。今回はときめきを求めて、男性と仮定する。ビジネス書を読むような人だから、年齢は私よりちょい上くらいなんやない? しかも仕事に一途で真面目。おそらくその流れからして、眼鏡をかけている。

ええやん……?

そこ、気持ち悪いとか言わない。

けど、「貸し出し表」1枚でここまで妄想を膨らませられんのマジ楽しい。「貸し出し表」から始まるプロファイリング。名前が見えないからこその楽しみ。もちろん、今回は勝手に男性と決めつけて妄想のネタにしたけど、ほんまは女性かもしれんし、私より歳下の可能性もある。眼鏡なんかかけてへんかもしれんし、同い年のギャルっていう可能性もゼロではない。

なんか「貸し出し表」1つで、本を挟んで向こう側にいる人を感じられてなんか感慨深かった。本好きとしてさ、やっぱ本好きの人がどこかにいるっていう実感があると嬉しいわけよ。

だからなんとなく、私も「貸し出し表」を一番後ろに挟んで返却してみた。

そうしたからとて次の人とコンタクトが取れるわけでも、甘酸っぱい恋が始まるわけでもないけど、でもなんかやってみたいなと思って。次の人が私の「貸し出し表」を見たらさ、どう思うんやろうね。私のことをプロファイリングするかな。全然興味無いかな。どっちにしろ、SNSみたいにレスポンスがない交流も面白いんじゃね?

ところで、仕事場に「喫煙所」があるんやったら同じ感じで「図書室」あってもいいと思うんやけどどない? 「喫煙所」で生まれる新しい仕事のネタがあんのと同じで、「図書室」から生まれるニューウェーブもあってええと思うんやけどな。

Dopeydog│文字とイラスト

文筆業・本間 海鳴のホームページ。文字と絵と泣きべそをかいて暮らしている。

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