「これ以上あなたを好きにならない」という推し方【2022.12.12】
「ガチ恋粘着獣」という漫画を読んでいる。なんでそんな心をえぐるようなもんを自ら読んでるかっちゅうと、自戒のために他ならない。
この漫画は、主人公の女の子たちがネット配信者にガチ恋して、その気持ちを徐々にヒートアップさせ、大変な事件が起きるまでを描いてるんよね。
私はネット配信者だけじゃなくて、アイドル・芸能人色んな人にガチ恋感情を募らせてる。だから、読んでおくべきやなと思ったわけ。
読んでたら、主人公の女の子たちの気持ちが痛いほど分かって泣いちゃった。なんか、ガチ恋対象がいない人からすると、この漫画ってただのホラー漫画なんやと思う。でも、実際に現在進行形でガチ恋している私からすると、この漫画がただの恋愛漫画にしか見えん。普通の恋愛漫画よりもよっぽど現実味がある。
主人公の女の子たち、最初は割と純粋に推してんのよ。ちゃんと「自分は相手に迷惑をかけたりしない、絶対に相手の嫌がることはしない」って決めて応援してんの。でも、とあることがきっかけで、狂っていっちゃうわけよ。
そのきっかけになる感情ってのは、いつも「ズルい」っていう感情なのね。
私の方があの人のこと好きなのに、街であの人に会ったなんてズルい。絶対に相手に迷惑をかけないように一線を引いてきたのに、一線を越えた奴があの人と関われるなんてズルい。そういう「ズルい」っていう感情が引き金になって、「じゃあ自分も一線を越えるしかない」って思った女の子たちが、段々とエスカレートしていく。
こういう漫画を読んでいる最中に、Twitterでとある動画を観てしまった。
それは、とあるジャニヲタ女が、ジャニタレにストーカー行為をしている動画。ジャニタレの後をつけて、同じ電車に無理やり乗り込もうとして、ジャニタレにキレられる。それを、ストーカー女は嬉々として「○○くんと喧嘩しちゃった♡ 大好きな○○くんに触られちゃった記念♡」とかいうコメントをつけて投稿してるわけ。
もちろんその動画主は他の良識あるジャニヲタにフルボッコにされて、謝罪をして、どうやったかは知らんが問題は解決したらしい。
そのジャニタレ、私がずいぶん前から気になってる子だった。一目ぼれして、ライブに行ったら、キラッキラの笑顔で手を振ってくれたあの子。アイドルとはこういうことだ、っていうのを全身で体現してくれたあの子。その子がさ、動画の中でさ、すっごい暴言吐いてんの。ついてくんな、いい加減にしろ、みたいな。そりゃそうだよ。ストーカーされてんだもん。
でもね、私はね、それをすっごい羨ましい・ズルいと感じてしまった。
そのストーカー女は、一線を越えた。でも、一線を越えたことで、「みんなの知らないあの子」を知れた。「自分しか知らないあの子」の動画が撮れた。オフィシャルじゃない顔、台本じゃない台詞を聞けた。自分にだけ向けられた言葉を聞けた。
ズルい。私だって、できることなら、直接会って思いを伝えたかった。あのライブが本当に素晴らしかったこと、目が合ってわざわざしゃがんで手を振ってくれたのに、緊張しすぎて固まって手を振り返せなかったこと、それからライブには行けなくなったけどずっと応援してること、絶対に最強のアイドルになれると確信してること。そんなのを全部伝えたいよ、面と向かって。
なのに、おりこうなヲタクにそんな機会は訪れない。人気者になりつつある彼らにファンレターを送ってもきっともう読まれないし、握手会なんかジャニーズには無い。うちわになんか書ききれない。
漫画と現実が急にリンクした。私も、『ガチ恋粘着獣』になる素質を持ってしまってる。それを膨らませたら、多分私も、あんなに好きなあの子に迷惑をかける最悪の人間になってしまうんだろうな。
もう今私は、なるべく推しに関わらないようにして生きてる。にわかとか、箱推しとか、DDとか、何言われてももう構わん。これは私なりの推し方。ライブにも行かない、CDも買わない、たまたま目に映ったときだけ推す。きっと私はヲタクとしては失格だと思う。でも、ヲタクになるにはもう行き過ぎてるのよ。私はもう、引かれた線の上に足が乗ってんのよ。それを越えないためには、もうこれ以上推しを好きにならないでいることしか、方法がない。きっとヲタクとしては失格やけど、私はこの推し方を誇りに思っている。
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