法を犯すくらいじゃ揺るがない自尊心【2021.4.17】

羨ましいな~って思うこと、日々常にある。マジで常にある。ないものねだりとは言うけど、無い物だらけの私からしたら万物全て羨ましてしゃあない。

車で二車線の道路を走ってた時に、隣の車線で原付の音がしてたのよ。運転してても、音で大体横で何起きてるか分かるやん。そんときもそんな感じで、あぁ隣を走ってる原付は2台あって、その2台はどうやら友達同士で、しかもちょっとヤンチャめな女の子が乗ってんなって思いながら走っとったわけ。ちょこちょこデカめの声で喋ってる音が聞こえてくるからね。ほんでしばらく走ってたら赤信号になったから、停止線で止まったわけ。ほんだら隣の二台も止まる。そしたら、一台の原付はエンジン音ごと止まった。

まあ、不思議に思うわけよ。普通赤信号でエンジン止めるって無いし。もしかして、なんかトラブルあったんかな。故障したんかな。原付乗っとるギャルたちは陽キャ、対する車の私はドが付く陰キャ。別に何って出来ることはないけど、もしも何か出来ることがあるんなら……と思ったのは大嘘。ただ好奇心で、エンジンが止まった理由を知りたくてふと横を見た。

メットインが開いてた。これ、原付乗ったことある人やったら分かると思うけど、原付の座るとこって荷物入るんよね。で、そこを開けようと思ったら、一回エンジンを切ってしまわんといけん。

何のこたぁない、メットインの中の荷物を取りたかったからエンジン止めただけか。けど私はまだ気になるわけ。わざわざ赤信号で、エンジン止めてまで取り出したいもんって何なんやろって。

私の予想、上着。私も原付乗るから分かるけど、原付乗ってる時の体感温度ってマジでマイナス10℃くらい寒く感じるんよ。「今日はあったかいな」って思って選んだ服も、原付乗ったらめちゃくちゃ寒かったりする。だから、多分走ってるうちに寒くなって、上着でも着ようと思ったんやろな。

で、答え合わせをするためにちらちら横目で見てたわけ。案の定、なんか布みたいなやつ取り出してる。あー、やっぱ上着か。……いや、でも上着にしてはちっちゃいな。何や、あれ。

タオルやな。無地の、白いタオル。タオルっていうか、雑巾に近いような、布切れ。

え、何で今タオル? と思った私、もう横目でちらちらとかのレベルじゃなくてガン見。いや、おかしいもん。わざわざエンジン止めてまで取り出す理由は何?

見てたらね、タオルを取り出したギャル、原付の後方に回った。そんで、ナンバープレートに、タオルをかけた。混乱する私の頭ん中と同じくらいの速度で、手が動いてナンバープレートを隠して、そんで、青信号になって、ギャルたちは走り去っていった。法定速度ガン無視のスタートダッシュで。

いや、マジでびっくりした。私の知らない世界を見た、信号待ちの間だけで。要するに彼女らは、「これから心おきなく法を破るために」、わざわざエンジンを止めてまでタオルを取り出してたわけよ。そんな世界あんの? 知らんかってんけど。

でね、冒頭に戻るわけやけど。

いや、あかんことよ。普通にあかんことよ、それ。でもね、なんか羨ましいなと思ってしまった。

私みたいな、自分に自信のない人間て、極論「法を守っている」ということで自尊心を保っている節があんのよ。

「まだ、何かを盗んだことは無いし」、「まだ、誰かを騙したこと無いし」、「まだ、人を殺したこと無いし」、だから、大丈夫。まだ生きてても大丈夫。って言い聞かせて、生存理由を無理やり付けてたりする。私はまだ底辺じゃない、だから大丈夫って思うことで、まだ自分にギリギリ価値があると思ってる。なんか自尊心の無い人を代表して言うたみたいになってるけど、違うな。私はやで、私は。

けどさ、このギャルたちはよ。「法を破ったところで失うものが無いほどの自尊心」を持ってる。

「原付のナンバープレート隠しても」、「ちょっと速度超過して走ろうと」、「警察に捕まろうと」、大丈夫。だって、今の自分たちに怖い物などないから。捕まったから何? そんとき楽しけりゃええやん! の精神。

これってすげえことやな、って思うの。いや、確かに法を破るのはあかんことやと思ってるし、破らんよ。あかんから。あまりに堂々としてたからちょっと混乱はしたけどさ。普通にあかんことしてんのよ。

でも、「大丈夫」なんよ、彼女らにとっては。「法を破ることくらい」。些細な事なのよ。私なんか、「法を破った時点で終わり」と思ってるから。それが自尊心を保てる最低ラインやから。

素直に、自尊心とか自己肯定感の高さに羨ましいなと思った。そりゃあ人生楽しいだろうよ。こんな悶々とした日記書いてるような陰キャヲタクよりよっぽど、人生楽しくてしゃあないだろうよ。

真面目に生きるの馬鹿らしくなってくるけど、これでしか自尊心保てんしな。さすがに法は破りたかないけど、「今楽しむ」を優先して考えるんも、もしかしたら人生を歩むのに必要なスキルなんかな、なんて思ったりした。まあ、明日からも私は原付30キロで走るんですけど。

Dopeydog│文字とイラスト

文筆業・本間 海鳴のホームページ。文字と絵と泣きべそをかいて暮らしている。

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